非結核性抗酸菌症(NTM症)|肺MAC症・症状・治療

画像:Wikimedia Commons(CC0)

「抗酸菌が検出された」と言われると、「結核ではないか」と心配になる方も多いと思います。

しかし、抗酸菌には結核菌以外にもさまざまな種類があり、これらを**非結核性抗酸菌(NTM:nontuberculous mycobacteria)**と呼びます。

非結核性抗酸菌は土壌や水など、私たちの身の回りの環境中に広く存在しています。

結核とは異なり、通常は人から人へ感染して広がる病気ではありません。

一方で、NTMの中には肺に感染して、長期間かけて進行するものがあります。


非結核性抗酸菌症とは

抗酸菌には結核菌などが含まれます。

そのうち、結核菌群やらい菌以外の抗酸菌を**非結核性抗酸菌(NTM)**と呼びます。

NTMには非常に多くの菌種があります。

肺の病気を起こす代表的な菌には、

  • Mycobacterium avium
  • Mycobacterium intracellulare
  • Mycobacterium abscessus
  • Mycobacterium kansasii
  • Mycobacterium xenopi
  • Mycobacterium fortuitum
  • Mycobacterium szulgai

などがあります。

その中でも、日本でよくみられるのが**Mycobacterium avium complex(MAC)**による肺MAC症です。


非結核性抗酸菌症は、いつから知られている?

「非結核性抗酸菌症」という病名を聞くと、比較的新しい病気のように感じるかもしれません。

しかし、その歴史をたどると、出発点は明治時代の結核研究にまでさかのぼります。

1882年、ドイツの細菌学者ロベルト・コッホが結核菌を発見しました。その後、結核菌を顕微鏡で見つけるための染色法が発達し、明治時代にはすでに、痰などの検体から抗酸性を示す菌を顕微鏡で確認する検査が行われていました。

ただし、当時は現在のように「抗酸菌には結核菌以外にも多くの種類がある」ということが十分に分かっていたわけではありません。

明治・大正時代には、抗酸菌=ほぼ結核菌だった

現在では、抗酸菌の中には結核菌以外にも非常に多くの種類があることが分かっています。

しかし明治・大正時代には、菌を詳しく分類する技術がまだ十分ではありませんでした。

結核菌とは異なる抗酸菌の存在は少しずつ知られるようになっていましたが、それらが人の肺に慢性的な病気を起こすという現在のような考え方は、まだ確立していませんでした。

つまり当時は、

「抗酸菌が見つかった」=まず結核を考える

という時代だったのです。

「抗酸菌だけれど結核ではないから大丈夫」という現在のような考え方ができる状況ではありませんでした。

昭和になって、結核とは違う抗酸菌が注目されるように

第二次世界大戦後になると、結核菌とは性質の異なる抗酸菌が、結核に似た肺の病気を起こすことが少しずつ分かってきました。

1950年代には、こうした菌は**「非定型抗酸菌(atypical mycobacteria)」**などと呼ばれるようになり、日本でも研究が進みました。

当時は、こうした菌が本当に病気の原因なのか、それとも検査材料に偶然混じっただけなのかを判断することが難しい場合もありました。

しかし、同じ菌が繰り返し検出される患者さんや、実際に肺の病変を起こしている患者さんが数多く報告されるようになり、結核菌とは別の抗酸菌が人の病気を起こすことが医学的に認識されていきました。

その後、菌の分類や培養、遺伝子検査などが進歩し、現在では「非結核性抗酸菌(NTM)」という呼び方が一般的になっています。

「抗酸菌が見つかった」から「何の菌なのかを調べる」時代へ

この歴史を知ると、現在の検査結果の意味が分かりやすくなります。

昔は、

抗酸菌が見つかる → 結核を疑う

というのが基本でした。

現在は、

抗酸菌が見つかる → 結核菌なのか、非結核性抗酸菌なのかを調べる

という時代になっています。

さらに、非結核性抗酸菌が検出されたとしても、「菌が見つかった=すぐに治療が必要」というわけではありません。

菌の種類、咳や痰などの症状、胸部X線・CTの所見、菌が繰り返し検出されるか、病変が進行しているかなどを総合して、本当に病気を起こしているのか、治療が必要なのかを判断します。

明治・大正時代には難しかったことが、現在では菌種を詳しく調べる検査や画像検査の進歩によって、より正確に判断できるようになっています。


結核と非結核性抗酸菌症は違います

「抗酸菌が検出された」と言われても、それだけで結核とは限りません。

結核は**Mycobacterium tuberculosis(結核菌)**によって起こります。

一方、非結核性抗酸菌症は、結核菌以外の抗酸菌によって起こります。

また、結核は人から人へ感染することがありますが、NTMは通常、環境中に存在する菌を吸い込むなどして発症すると考えられています。

したがって、結核とNTMでは、診断後の感染対策や治療の考え方も異なります。


「抗酸菌が出た=結核」ではありません

喀痰検査などで「抗酸菌陽性」と言われると、結核を心配される方が多いと思います。

しかし、抗酸菌が検出されたことだけで結核とは判断できません。

結核菌なのか、非結核性抗酸菌なのかを確認する必要があります。

さらに、NTMが検出された場合でも、

「菌が検出された」=「治療が必要な病気」

とは限りません。

胸部CTなどの画像、症状、喀痰検査、菌種、過去の画像との比較などを総合して判断します。


「結核ではない」と分かっても、それだけで安心とは限りません

以前は、結核菌以外の抗酸菌が見つかった場合、それが本当に病気を起こしているのか、それとも環境中の菌が検査材料に混じっただけなのかを判断することが、現在より難しい時代がありました。

その後、研究が進み、結核菌とは別の抗酸菌も、実際に人の肺に慢性的な病気を起こすことがあることが分かってきました。日本でも1950年代から「非定型抗酸菌症」として報告・研究されるようになり、現在では「非結核性抗酸菌症(NTM症)」として診療されています。

そのため現在では、

「結核ではない」=「治療の必要がない」

とは考えません。

非結核性抗酸菌症の中には、長い時間をかけて肺の病変が進行するものがあります。一方で、菌が検出されても、すぐに治療を開始せず、定期的に検査をしながら経過をみる場合もあります。

菌の種類、咳や痰などの症状、胸部X線・CTの所見、菌が繰り返し検出されるか、病変が進行しているかなどを総合して、本当に病気を起こしているのか、治療が必要なのかを判断することが大切です。

つまり、現在の非結核性抗酸菌症の診療では、

「結核なのか、結核ではないのか」だけではなく、
「何という菌なのか」「肺にどのような変化があるのか」「進行しているのか」まで確認する

ことが重要になっています。


非結核性抗酸菌症はすべて治療するわけではありません

NTMが検出されたからといって、すぐに薬物治療を開始するとは限りません。

症状が乏しく、画像上も大きな変化がない場合には、定期的に胸部画像や喀痰検査を行いながら経過を見ることがあります。

一方、

  • 咳や痰が続く
  • 血痰がある
  • 画像が徐々に悪化する
  • 空洞が形成される
  • 肺の構造が壊れてきている
  • 全身状態が悪化している

などの場合には、治療を検討します。


菌種によって進行や治療が異なります

非結核性抗酸菌症では、どの菌種が検出されたのかが非常に重要です。

菌種によって、

  • 病気の進行速度
  • 肺の画像所見
  • 使用する薬剤
  • 治療期間
  • 治療の難しさ

などが異なります。

例えば、MACによる肺MAC症は比較的ゆっくり進行することが多い一方、Mycobacterium abscessus complexでは治療が難しいケースがあります。

そのため、「NTM」という名前だけで病気の性質を判断することはできません。


肺MAC症

日本でよくみられるNTM肺疾患の一つが、肺MAC症です。

MACは、

  • Mycobacterium avium
  • Mycobacterium intracellulare

などを含む菌群です。

肺MAC症では、

  • 咳
  • 痰
  • 倦怠感
  • 微熱
  • 体重減少
  • 血痰

などがみられることがあります。

一方、初期にはほとんど症状がなく、健康診断や別の病気の検査で撮影した胸部CTから偶然見つかることもあります。


肺に空洞がある場合には注意が必要です

NTM肺疾患では、肺に結節や気管支拡張を認めるタイプだけでなく、空洞を形成するタイプがあります。

特に既存の肺病変がある場合には、そこにNTMが感染・定着し、病変が徐々に進行することがあります。

空洞が大きい場合や、病変が限局している場合などでは、薬物治療だけでは十分な効果が得られないことがあります。

そのようなケースでは、肺切除などの外科的治療を検討することもあります。

したがって、

「NTMだから大丈夫」

とは一概には言えません。

菌種、胸部CTの所見、症状、病変の進行性などを総合的に判断することが重要です。


非結核性抗酸菌症の診断

診断では、以下を総合して判断します。

胸部X線・胸部CT

肺の結節、気管支拡張、浸潤影、空洞などを確認します。

特に過去の画像と比較し、病変が進行しているかどうかを見ることが重要です。

喀痰検査

抗酸菌の存在を確認し、さらに結核菌なのか、NTMなのかを調べます。

菌種の同定

NTMの場合は、どの菌種なのかを確認します。

菌種によって病気の進行や治療方法が異なるためです。


非結核性抗酸菌症と診断されたら

NTMが検出された場合でも、すぐに治療が必要とは限りません。

症状がない、あるいは軽度で、画像上もほとんど変化がない場合には、定期的に検査を行いながら経過をみることがあります。

一方、病変が進行している場合には、薬物治療を検討します。

治療は長期間にわたることもあり、治療するか、経過を見るかについては、菌種や肺の状態を踏まえて慎重に判断する必要があります。


結核との違い

結核非結核性抗酸菌症
原因菌結核菌結核菌以外の抗酸菌
代表的な菌M. tuberculosisMAC、M. abscessusなど
主な感染源結核患者土壌・水など環境中
人から人への感染あり通常なし
空気感染対策重要通常は結核ほど必要ない
治療原則として治療経過観察となる場合もある
菌種による違い比較的小さい非常に大きい

「抗酸菌が検出された」と言われたら

「抗酸菌が検出された」と言われた場合には、まず、

① 結核菌なのか

② 非結核性抗酸菌なのか

を確認することが重要です。

NTMであれば、さらに、

③ 何という菌種なのか

④ 本当に肺の病気を起こしているのか

⑤ 病変は進行しているのか

を確認します。

「結核ではなかった」というだけで安心するのではなく、菌種と胸部画像、症状、経過を総合的に判断することが大切です。


抗酸菌について心配な方へ

健康診断や胸部CTで肺の異常を指摘された方、喀痰検査で「抗酸菌が検出された」と言われた方は、必ずしも結核とは限りません。

一方、非結核性抗酸菌症の中にも、時間をかけて進行する病気があります。

菌種と画像を確認し、今すぐ治療が必要なのか、それとも経過観察でよいのかを判断することが重要です。

当院では、胸部画像や喀痰検査などをもとに、非結核性抗酸菌症について診療しています。


長引く咳や痰、肺の陰影についてご相談ください

長引く咳や痰が続いている方、健康診断や他の医療機関で「肺に影がある」「気管支が拡張している」「抗酸菌が検出された」と指摘された方は、一度ご相談ください。

非結核性抗酸菌症(NTM症)は、すぐに治療が必要な場合もあれば、定期的な検査で経過をみていく場合もあります。結核との区別や菌の種類、胸部X線・CTの所見、症状などを総合して判断することが大切です。

当院では、呼吸器内科の診療経験をもとに、長引く咳や痰、胸部画像の異常、抗酸菌検査での陽性所見などについて診療しています。

名古屋市天白区で、長引く咳や痰、肺の陰影、非結核性抗酸菌症(NTM症)についてご心配な方は、お気軽にご相談ください。

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外部リンク:厚生労働省、非結核性抗酸菌症