結核|症状・検査・診断・感染について

結核は、**Mycobacterium tuberculosis(結核菌)**によって起こる感染症です。

日本では戦後、結核対策や抗結核薬の普及などによって患者数は大きく減少しました。しかし、結核は現在もなくなった病気ではありません。

日本では、結核患者の中で高齢者の割合が高いことが大きな特徴です。

高齢者では、若い頃に感染した結核菌が、加齢や免疫機能の低下などをきっかけに再び活動を始め、結核を発病することがあります。そのため、高齢者の肺炎や原因不明の肺陰影では、結核を鑑別に入れることが重要です。

一方で、結核は高齢者だけの病気ではありません。若い世代でも結核は発生しています。

特に近年は、**外国生まれの若年者における結核が増えていることが、日本の結核対策上の重要な課題となっています。**2025年には、20~29歳の新登録結核患者の91.1%が外国生まれでした。一方、日本生まれの20~29歳でも141人が新たに結核と登録されています。

つまり、日本の結核は、高齢者に多いという特徴がある一方、若い人にも発症し、特に外国生まれの若年者では増加が目立つという状況です。

そのため、年齢だけで結核を否定することはできません。

「咳がなかなか治らない」「肺炎として治療しているのに改善しない」「原因不明の体重減少がある」といった場合には、年齢や出身にかかわらず、結核を鑑別に入れることが大切です。

「咳がなかなか治らない」「肺炎として治療しているのに改善しない」「原因不明の体重減少がある」といった場合には、結核も鑑別に入れる必要があります。

当院では、症状や病歴、胸部X線検査などから結核が疑われる場合には、必要な検査や適切な医療機関への紹介を行っています。


結核とは

結核は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による感染症です。

産業革命による人口集中などを背景として、かつて結核は日本国内にも広く蔓延し、「国民病」と呼ばれていました。

戦後は、抗結核薬の登場、公衆衛生対策、早期発見・治療などによって、結核患者は急速に減少しました。

しかし、結核は現在も世界的に重要な感染症です。

日本でも結核は発生し続けており、特に高齢者の結核が大きな課題となっています。


結核は「飛沫感染」ではなく「飛沫核感染」

結核の重要な特徴の一つが、**飛沫核感染(空気感染)**です。

結核患者が咳やくしゃみ、会話などをすると、結核菌を含む微小な粒子が空気中に放出されます。

比較的大きな粒子は「飛沫」と呼ばれますが、水分が蒸発して小さくなった飛沫核は1~5μm程度の非常に小さな粒子となり、空気中に浮遊することがあります。

これを吸い込むことで、結核菌が肺の奥まで到達し、感染することがあります。

インフルエンザなどの飛沫感染との違い

飛沫感染飛沫核感染
粒子比較的大きい非常に小さい
大きさの目安5μm以上1~5μm程度
空気中での動き比較的早く落下長時間浮遊することがある
代表例インフルエンザなど結核
対策マスク・距離など換気・空気感染対策が重要

つまり結核では、患者さんの近くで飛沫を浴びるだけではなく、空気中に浮遊する結核菌を含む飛沫核を吸い込むことによって感染するという点が重要です。


結核に感染すると、必ず発病するのか?

いいえ。結核菌に感染した人すべてが結核を発病するわけではありません。

結核菌を吸い込んで感染すると、免疫によって菌の増殖が抑えられ、症状がないまま経過することがあります。

この状態を**潜在性結核感染症(LTBI)**といいます。

結核菌に感染した人のうち、将来的に結核を発病するのはおおむね5~10%程度とされています。

感染後早期は発病リスクが比較的高く、その後も高齢化や免疫機能の低下などをきっかけとして、長期間潜んでいた結核菌が再び増殖し、発病することがあります。

結核感染から発病まで

結核菌を吸い込む

↓

感染

↓

免疫によって菌の増殖が抑えられる

↓

潜在性結核感染症

↓

そのまま生涯発病しない人も多い

↓

一部で免疫機能の低下などが起こる

↓

結核菌が再活性化

↓

活動性結核

という経過をとります。


なぜ高齢者に結核が多いのか

日本では、結核患者に占める高齢者の割合が高いことが特徴です。

高齢者では、

  • 若い頃に結核菌に感染していた
  • 加齢によって免疫機能が低下する
  • 糖尿病などの基礎疾患がある
  • 悪性腫瘍がある
  • ステロイドや免疫抑制薬などを使用している

などの理由から、過去に感染した結核菌が再び活動を始めることがあります。

つまり、

若い頃に感染

↓

長期間、体内で抑え込まれる

↓

高齢化・免疫機能低下

↓

結核菌が再活性化

↓

肺結核を発病

という経過が、高齢者の結核では重要です。

そのため、高齢者の肺炎や原因不明の肺陰影では、結核を鑑別に入れることが重要です。


どのようなときに結核を疑うか

次のような場合には、結核を疑って検査を検討します。

1.家族や同居者に結核患者がいる

特に、排菌している肺結核患者との接触があった場合には注意が必要です。

2.過去に結核にかかったことがある

過去に結核にかかったことがある方では、結核の再発・再燃を考慮する必要があります。

また、過去にどのような治療を受けたかによっても、再発を考える際の評価が変わります。

現在の肺結核の標準治療では、リファンピシン(RFP)、イソニアジド(INH)、ピラジナミド(PZA)、エタンブトール(EB)などを組み合わせた多剤併用療法を行い、通常は最初の2か月に4剤、その後4か月はRFPとINHを中心とした治療を行います。

一方、現在よりも前の時代には、リファンピシンを含まない治療や、イソニアジド(INH)とストレプトマイシン(SM)などを中心とした、現在とは異なる治療を受けていた方もいます。

現在の標準的な治療を適切な期間受けて治療を完了した方と、古い時代に治療を受けた方、治療期間が短かった方、途中で服薬を中断した方、治療内容がよく分からない方では、再発・再燃を考える際の注意点が異なります。

「結核の薬を飲んで尿が赤くなった」という記憶も手掛かりになります

過去の治療内容を覚えていない方でも、

「結核の薬を飲んでいたら、尿が赤くなった、オレンジ色になった」

と記憶していることがあります。

これは、リファンピシン(RFP)によって尿が赤橙色に着色した可能性があります。

そのため、このような記憶は、過去にリファンピシンを使用した治療を受けた可能性を考えるうえで、一つの手掛かりになります。

ただし、尿の色だけから、当時どの薬を使用したのか、治療が十分であったのか、再発リスクがどの程度なのかを判断することはできません。

お薬手帳、紹介状、結核の治療記録などが残っている場合には、それらを確認することが重要です。

特に、過去の治療内容が分からない方や、古い時代に結核治療を受けた方では、現在の胸部画像や症状だけでなく、過去の治療歴も含めて評価する必要があります。

また、過去に結核治療を受けた方で、再び肺の陰影が出現したり、長引く咳、痰、微熱、体重減少などがみられたりした場合には、

「昔、結核を治療したから大丈夫」

と考えず、結核の再発・再燃を含めて検査することが大切です。

なお、結核治療歴のある方で再び抗酸菌が検出された場合には、結核の再発だけでなく、**非結核性抗酸菌症(NTM症)**の可能性もあります。結核菌なのか、それ以外の抗酸菌なのかを確認することが重要です。

3.高齢者の肺炎

高齢者では、結核が一般的な肺炎のように見えることがあります。

4.咳や痰が3~4週間以上続いている

長引く咳では、喘息、咳喘息、慢性閉塞性肺疾患、感染症などだけでなく、結核も鑑別に入れる必要があります。

5.原因不明の体重減少や全身症状がある

  • 体重減少
  • 食欲低下
  • 慢性的な疲労
  • 貧血
  • 微熱

などが続く場合には注意が必要です。

6.免疫機能が低下している

  • HIV/AIDS
  • 糖尿病
  • 腎透析
  • 悪性腫瘍
  • 免疫抑制薬の使用

などでは、結核の発病リスクが高くなります。

7.一般的な抗菌薬による治療で改善しない

肺炎として治療しているにもかかわらず改善しない場合には、結核を含めて診断を見直す必要があります。

8.画像所見に比べて全身症状が軽い

胸部X線やCTで明らかな肺病変があるにもかかわらず、発熱や咳などの症状が比較的軽い場合にも、結核を鑑別に入れることがあります。


肺結核の診断

肺結核の診断では、一つの検査だけで判断するのではありません。

病歴・症状、画像検査、細菌学的検査、結核感染検査などを総合して診断します。

1.病歴・臨床症状

結核患者との接触歴、過去の結核歴、咳や痰などの症状、基礎疾患、免疫状態などを確認します。

2.画像検査

胸部X線検査や胸部CTを行います。

肺結核では、肺の上葉などに浸潤影、結節影、空洞などを認めることがあります。

ただし、画像だけで結核と確定することはできません。

3.細菌学的検査

結核が疑われる場合には、喀痰検査が重要です。

喀痰の塗抹検査、培養検査、核酸増幅検査などを組み合わせて、結核菌の存在を確認します。

4.IGRA(QFT-Plusなど)

QFT-Plusなどの**IGRA(インターフェロンγ遊離試験)**は、結核菌に感染したことがあるかどうかを調べる検査です。

ただし、IGRAだけでは、現在活動性の結核を発病しているかどうかを判断することはできません。

活動性肺結核が疑われる場合には、胸部画像や喀痰検査などを組み合わせて判断します。


結核の感染性と感染対策

結核が疑われる場合には、他の患者さんや医療従事者への感染を防ぐことが重要です。

特に感染性の高い肺結核では、通常の飛沫感染対策だけではなく、空気感染を想定した感染対策が必要となります。

換気、患者さんの動線、適切な個人防護具などを含めて対応します。

結核が疑われる患者さんを診療する場合には、他の患者さんへの感染を防ぐため、診療方法を変更したり、専門医療機関への紹介が必要となることがあります。


結核患者との接触があった場合

結核患者との濃厚な接触があった場合には、接触者健診が行われることがあります。

感染性の程度や接触時間・頻度などを考慮して、必要な人について検査を行います。

感染して間もない時期には、IGRAがまだ陽性にならないことがあります。

そのため、接触から一定期間をおいて再検査することがあります。

具体的な検査時期や対象者は、接触した状況によって異なるため、保健所などの指示に従うことが重要です。


長引く咳はご相談ください

長引く咳があるからといって、必ずしも結核というわけではありません。

しかし、

  • 咳や痰が3~4週間以上続いている
  • 肺炎の治療をしても改善しない
  • 高齢者で原因不明の肺陰影がある
  • 結核患者との接触歴がある
  • 原因不明の体重減少や倦怠感がある

といった場合には、結核を除外することが重要です。

当院では、長引く咳や肺の異常陰影など、さまざまな呼吸器症状の診療を行っています。

「なかなか咳が治らない」「肺炎と言われたがよくならない」など、気になる症状がありましたら、当院の咳人(せきんちゅ)外来もしくは呼吸器科にご相談ください。

外部リンク:結核予防会結核研究所