職業性喘息

職業性喘息(しょくぎょうせいぜんそく)の解説バナー。化学物質や小麦粉、塗料、動物など職場の原因物質と、職場での症状・医師への相談イメージ

職場に行くと咳が出る、仕事中に息苦しくなる方へ

「仕事の日になると咳が出る」

「職場にいると息苦しくなる」

「休日になると症状が楽になる」

このような症状がある場合、職場環境が喘息に関係している可能性があります。

職場で吸い込む粉じん、アレルゲン、化学物質などが原因となって発症する喘息を職業性喘息といいます。

また、もともと喘息がある方が、職場の粉じんや化学物質、温度・湿度などによって症状が悪化することもあります。これは作業増悪喘息と呼ばれ、職業性喘息と合わせて「作業関連喘息」として考えます。

日本呼吸器学会でも、仕事中に有害な粉じん、アレルゲン、化学物質などを吸入することで生じる呼吸器疾患を職業性肺疾患として紹介しており、職業性喘息はその代表的な疾患の一つです。
【日本呼吸器学会「職業性肺疾患」】


こんな症状はありませんか?

次のような症状がある場合は、職業性喘息を疑うきっかけになります。

  • 職場に行くと咳が出る
  • 仕事中にゼーゼー、ヒューヒューする
  • 職場で息苦しくなる
  • 仕事を始めてから喘息の症状が出てきた
  • 休日になると咳や息苦しさが軽くなる
  • 長期休暇になると症状が改善する
  • 特定の作業をすると咳が出る
  • 特定の粉や薬品を扱うと症状が出る
  • 仕事をしている期間に喘息が悪化した

特に、**「仕事の日は症状があるのに、休日や長期休暇には楽になる」**という経過は重要な手がかりになります。

ただし、職業性喘息では症状が仕事中だけに出るとは限りません。職場で原因物質を吸い込んだあと、帰宅してから、あるいは夜間に症状が出ることもあります。


職業性喘息とは?

職業性喘息とは、仕事中にさらされる物質などが原因となって発症する喘息です。

原因となる物質には、アレルギー反応を起こすものと、気道を刺激することで喘息を引き起こすものがあります。

一方、もともと喘息がある方では、職場の環境によって喘息が悪化することがあります。

例えば、

仕事を始める
↓
職場で特定の物質を吸い込む
↓
咳・喘鳴・息苦しさが出る
↓
休日になると症状が軽くなる

という経過を繰り返している場合には、仕事と喘息との関係を詳しく調べる必要があります。


どのような仕事で起こりますか?

職業性喘息は、さまざまな職業で起こる可能性があります。

原因となる物質の例として、次のようなものがあります。

食品を扱う仕事

  • 小麦粉
  • そば粉
  • 大豆
  • 魚介類
  • 食品添加物など

パンや菓子を製造する仕事などでは、粉状の物質を吸い込むことで喘息が起こることがあります。

医療・介護の仕事

  • ラテックス
  • 消毒剤
  • 薬剤
  • 各種化学物質など

製造業・工場

  • 金属
  • 溶接関連物質
  • 樹脂
  • 塗料
  • 接着剤
  • 化学物質など

清掃業

  • 洗剤
  • 消毒剤
  • 清掃用薬品など

農業・園芸

  • 植物
  • 花粉
  • 農業関連物質
  • カビなど

動物を扱う仕事

  • 動物の毛
  • 皮膚由来の物質
  • 尿や唾液など

このほかにも、職場で扱うさまざまな粉じん、アレルゲン、化学物質などが原因となることがあります。

「自分の仕事は喘息とは関係ないだろう」と決めつけず、どのような作業をしているのか、何を扱っているのかを医師に詳しく伝えることが大切です。


職業性喘息の診断

職業性喘息の診断では、まず喘息そのものがあるかどうかを確認します。

そのうえで、喘息と仕事との間に関係があるかを調べます。

1.仕事と症状の関係を詳しく聞きます

診断で非常に重要なのが問診です。

例えば、

  • どのような仕事をしているか
  • どのような作業をしているか
  • どんな物質を扱っているか
  • その仕事を始めたのはいつか
  • 症状が出始めたのはいつか
  • 仕事中に症状が出るのか
  • 帰宅してから症状が出るのか
  • 休日には症状が軽くなるのか
  • 長期休暇ではどうなるのか
  • 職場で換気や防護具を使用しているか
  • 職場で他にも同じような症状の人がいるか

などを確認します。

**「いつ、どこで、何をしたときに症状が出るのか」**が重要です。


2.呼吸機能検査

スパイロメトリーなどの呼吸機能検査を行い、肺や気管支の状態を調べます。

喘息では気道が狭くなり、息を吐き出しにくくなることがあります。

必要に応じて、気管支拡張薬を使用した前後で呼吸機能を比較することもあります。


3.呼気NO検査

呼気NO検査では、吐いた息に含まれる一酸化窒素(NO)を測定します。

喘息では気道に好酸球性の炎症が起こっていることがあり、呼気NOはその炎症の程度を評価する手がかりになります。

ただし、呼気NO検査だけで職業性喘息と診断できるわけではありません。

症状や職場との関係、呼吸機能検査、血液検査などを組み合わせて判断します。


4.ピークフロー検査

職業性喘息を考えるうえで、ピークフロー検査が重要になることがあります。

ピークフローとは、思い切り息を吐いたときの最大呼気流量です。

医師の指示のもとで、勤務日と休日にピークフローを測定し、症状や仕事内容と一緒に記録します。

例えば、

勤務日 → ピークフローが低下する
休日 → ピークフローが改善する

という変化を繰り返して認めれば、仕事と喘息との関連を考える重要な材料になります。

環境再生保全機構でも、職業性ぜん息の診断では、自宅と職場でピークフローを測定するなどして、ぜん息と職業との関連を調べる方法が紹介されています。
【外部リンク:環境再生保全機構「職業性ぜん息」】


5.血液検査

必要に応じて血液検査を行います。

アレルギーの原因となる物質に対する特異的IgE抗体などを調べることがあります。

ただし、血液検査で特定のアレルゲンが陽性になっただけで、それが職業性喘息の原因だと決まるわけではありません。

職場での曝露状況と症状の時間的な関係を合わせて判断することが重要です。


職業性喘息の治療

職業性喘息の治療では、通常の喘息治療に加えて、原因となっている物質への曝露を減らすことが重要です。

原因物質をできるだけ避ける

原因となる物質が明らかな場合には、その物質への曝露を減らすことが基本になります。

職場の状況によって、

  • 換気を改善する
  • 作業方法を変更する
  • 防護具を適切に使用する
  • 原因物質を扱う作業を減らす
  • 配置転換を検討する

などの対策を行います。

産業医がいる職場では、産業医に相談することも重要です。

原因物質への曝露が続くと喘息のコントロールが難しくなることがあるため、「薬を飲んでいれば仕事を続けても大丈夫」とは限りません。

一方で、仕事を辞めることが必要とは限りません。職場環境や原因物質によって対応は異なるため、医師や産業医と相談しながら対策を検討します。


公害喘息と職場の環境について

職業性喘息と公害喘息は同じものではありませんが、どちらも環境と呼吸器疾患との関係を考えることが重要です。

当院院長は、呼吸器内科医として30年以上、喘息を含む呼吸器疾患の診療に携わってきました。

さらに、愛知県公害健康被害認定審査会において約10年間、公害喘息を含む公害健康被害の審査に携わり、審査の議事進行を務めてきました。

愛知県公害健康被害認定審査会は、公害健康被害者の認定・更新等を審査するために設置された審査会で、医学・法律学の学識経験者によって構成されています。
【愛知県「愛知県公害健康被害認定審査会」】

また、環境保健に関するこれまでの取り組みに対して、環境保全関係功労者として表彰されています。

職場環境と喘息との関係が気になる方は、症状だけでなく、仕事内容や職場環境も含めてご相談ください。


職業性喘息かな?と思ったら

職業性喘息では、**「仕事と症状の関係に気づくこと」**が最初の一歩です。

「仕事に行くと咳が出るけれど、休日は楽になる」

「特定の作業をすると息苦しくなる」

「仕事を始めてから喘息になった」

このような場合には、職場で何を吸い込んでいるのか、どの作業で症状が出るのかを整理して、医師に伝えてください。

可能であれば、

  • 仕事内容
  • 作業内容
  • 使用している薬品・材料
  • 症状が出る時間帯
  • 勤務日と休日の症状の違い
  • 長期休暇中の症状
  • 使用しているマスクや防護具

などをメモしておくと、診断の参考になります。

当院では、職業性喘息を含め、喘息や長引く咳などの呼吸器疾患を診療しています。

【喘息外来】

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【呼吸器科】


よくある質問

Q.仕事中だけ咳が出ます。職業性喘息でしょうか?

仕事と咳との間に関連がある可能性はありますが、仕事中だけ咳が出るというだけで職業性喘息と決まるわけではありません。

喘息の検査に加えて、仕事内容や症状が出るタイミング、休日や長期休暇で症状がどう変化するかなどを確認します。


Q.休日になると喘息が楽になります。職業性喘息の可能性がありますか?

可能性があります。

職場で原因物質にさらされている場合、勤務日には症状が悪化し、休日や長期休暇に症状が軽くなることがあります。

ただし、季節やアレルゲン、運動、睡眠など他の要因でも症状は変化するため、詳しい評価が必要です。


Q.職業性喘息では、仕事を辞めなければいけませんか?

必ずしも仕事を辞める必要があるわけではありません。

原因物質への曝露を減らすため、換気、防護具、作業方法の変更、配置転換などを検討します。

職場に産業医がいる場合は、産業医への相談もおすすめします。


Q.職業性喘息ではどのような検査をしますか?

症状や仕事内容に応じて、呼吸機能検査、呼気NO検査、ピークフロー検査、血液検査などを行います。

特に、勤務日と休日で症状やピークフローがどのように変化するかを調べることが、仕事との関連を判断するうえで重要になることがあります。


Q.職場では咳が出るのに、家では症状がありません。それでも喘息ですか?

その可能性はあります。

職場で特定の物質にさらされることで症状が出ている場合、職場を離れると症状が軽くなることがあります。

「家では大丈夫だから喘息ではない」とは限りません。


Q.職場で使っている物質が喘息の原因か調べられますか?

仕事内容や使用物質、症状との時間的な関係を確認し、必要に応じてアレルギー検査などを行います。

ただし、血液検査だけで原因物質を決められるとは限りません。職場での曝露状況と症状・検査結果を総合的に判断します。


院長から

当院院長は、呼吸器内科医として30年以上、喘息を含む呼吸器疾患の診療に携わってきました。

また、愛知県公害健康被害認定審査会に約10年間携わり、公害喘息を含む公害健康被害の審査を行ってきました。

職場での咳や息苦しさは、単なる「仕事の疲れ」と思われてしまうことがあります。

しかし、仕事と症状との間に一定の関係がある場合には、職業性喘息や作業関連喘息の可能性があります。

「仕事の日だけ咳が出る」「職場に行くと息苦しい」「休日になると楽になる」

このような症状がある方は、一度ご相談ください。

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参考情報

【日本呼吸器学会「職業性肺疾患」:】

【環境再生保全機構「職業性ぜん息」】

【愛知県「愛知県公害健康被害認定審査会」】

【厚生労働省ガイドライン】