長引く咳は喘息かもしれません

咳が長引くときは喘息かもしれません

インフルエンザの流行もようやく落ち着いてきました。

この時期の外来では、発熱の患者さんは減ってきますが、その一方で「咳が長引く」という患者さんが増えてきます。

風邪やインフルエンザのあとに咳が少し続くこと自体は珍しいことではありません。気道の炎症が残るため、1〜2週間ほど咳が続くことはよくあります。

しかし次のような場合は、一度医療機関の受診をおすすめします。

  • 咳が2週間以上続く
  • 咳がなかなか改善しない
  • 夜間や明け方に咳が出る
  • 運動すると咳き込む

外来で診察していると、このような長引く咳の原因として意外と多いのが「喘息」です。

喘息というと「ゼーゼーする病気」というイメージを持たれることが多いですが、実際には咳だけが続くタイプの喘息(咳喘息)も少なくありません。

長引く咳の原因としての喘息

喘息は、気道に慢性的な炎症が起こる病気です。炎症によって気道が腫れ、刺激に敏感になるため、次のような症状が起こります。

  • 夜間の咳
  • 明け方の咳
  • 運動時の咳
  • 風邪のあと長引く咳

特に、風邪のあとに咳だけが残る場合、その背景に喘息が隠れていることは珍しくありません。

喘息は昔よりずっと安全な病気になりました

30年ほど前、喘息は今よりずっと怖い病気でした。

研修医のころ、救急外来には喘息発作の患者さんが多く来ていました。重症になると気管挿管が必要になることもあり、挿管した患者さんをアンビューバッグで換気すると、気道が強く狭くなっていてバッグが固かったことを今でも覚えています。

当時、日本では喘息で亡くなる方が年間1万人近くいました。

しかし現在は状況が大きく変わっています。日本の喘息死亡数は、1995年に7,253人でピークを迎えたあと減少を続け、最近では年間1,000人前後まで減っています。

この30年で喘息は、「命に関わることもある病気」から「きちんと治療すれば普通に生活できる病気」へと大きく変わりました。

喘息治療を変えた吸入薬

この変化の最大の理由は、吸入ステロイド薬の普及です。

喘息の本体は「気道の炎症」です。昔は「発作が起きたときに気管支を広げる薬」が中心でしたが、現在は炎症を抑える吸入薬を使って発作そのものを防ぐ治療が基本です。

この治療の普及によって、次のようなことが大きく減りました。

  • 喘息発作
  • 入院
  • 喘息による死亡

いまの喘息治療の目標

昔の喘息治療の目標は、「発作で死なないこと」でした。

しかし現在はそれだけではありません。

いまの喘息治療では、次のような普通の生活を問題なく送れることが目標になっています。

  • 夜ぐっすり眠れる
  • 咳が出ない
  • 学校や仕事を休まない
  • 運動もできる

最近では「臨床的寛解」という考え方もあり、症状がほとんどない状態を目指す治療も行われています。

咳が続くときは受診をご検討ください

咳が長引く原因には、喘息以外にもさまざまなものがあります。

  • 咳喘息
  • 気管支炎
  • 肺炎
  • 心不全
  • 肺がん
  • 副鼻腔炎
  • 逆流性食道炎

特に次のような場合は、喘息が関係していることがあります。

  • 咳が2週間以上続く
  • 夜に咳が出る
  • 風邪のあと咳だけが残る

咳が長引いているときは、我慢せず一度ご相談ください。

まとめ

呼吸器の診療を始めて30年ほどになりますが、この間に喘息治療は大きく進歩しました。

かつては命に関わることもある病気でしたが、現在では適切に治療すれば多くの患者さんが普通の生活を送ることができます。

私たちが喘息治療で目指しているのは、単に咳を止めることではありません。

患者さんが、仕事や学校、運動や旅行など、自分のやりたいことを制限されずに続けられる生活を取り戻すことです。

咳や息苦しさで生活が制限されていると感じる方は、ぜひ一度ご相談ください。