【コラム】治らない喘息に悩む方へ|重症・難治性喘息と最新治療

吸入薬をしっかり続けているのに、咳や息苦しさ、発作が残る。そんな方はいませんか?このような「治りにくい喘息」は、重症・難治性喘息の可能性があります。ここでは、最新の治療と費用支援制度について、できるだけわかりやすく説明します。

喘息治療の目標

1. 今の症状を抑えること

咳や息苦しさ、夜間の発作などが出ないようにし、日常生活を快適に過ごすことです。そのためには気道の炎症を抑えることが重要です。炎症を放置すると、気道の構造が変化してしまい、回復しにくくなります。

2. 将来の悪化を防ぐこと

発作の悪化(急性増悪)は、たとえ一度でも肺機能を低下させることがあります。「今の症状を抑えること」と「将来の悪化を防ぐこと」、この両方を目標にすることが大切です。

喘息と気道炎症のイメージ

正常気管支・気道炎症・喘息発作・リモデリングの模式図
正常な気管支 → 気道炎症 → 喘息発作 → リモデリング(元へは戻りにくい変化)の模式図

重症・難治性喘息とは

強めの吸入薬(高用量ICS+LABA)を使っても十分に症状が抑えられず、さらに追加薬(LTRA、LAMA、経口ステロイド、生物学的製剤など)を必要とする喘息を指します。全体の約4〜10%が該当しますが、この少数の患者さんが最も治療に苦労する層です。

T2炎症とは?

最近の研究で、喘息には「T2炎症」というタイプがあることがわかってきました。これは、体の免疫反応のひとつで、好酸球IgE抗体などが関係しています。T2炎症が強い人は、発作を繰り返しやすく、通常の治療では抑えにくい傾向があります。

一方で、T2炎症があまり関係しないタイプの喘息(非T2型)もあり、その場合は別の仕組みで症状が起こっています。最近では、T2型・非T2型どちらにも効果が期待できる薬が登場し、治療の幅が広がっています。

最新の治療:生物学的製剤

生物学的製剤は、炎症を引き起こす「特定の分子」をピンポイントで抑える薬です。これまで効かなかった方でも、症状が安定するケースが増えています。

  • 抗IgE抗体(オマリズマブ)
  • 抗IL-5抗体/抗IL-5Rα抗体(メポリズマブ、ベンラリズマブ)
  • 抗IL-4Rα抗体(デュピルマブ)
  • 抗TSLP抗体(テゼペルマブ)

治療は3〜6か月程度続けて効果を評価し、十分でなければ他の薬へ切り替えます。体質や検査値を見ながら、最も合う薬を選ぶことが大切です。

気管支喘息に使用する生物学的製剤(製品名・作用機序・自己注射・適応などの比較表)
気管支喘息に使用する主な生物学的製剤の比較表(製品名/一般名・発売年・作用機序・自己注射・適応など)

高額だけど、支援制度があります

生物学的製剤は非常に高額な薬剤ですが、日本では次の制度で自己負担を大きく減らせます。

  • 高額療養費制度:月ごとの医療費上限を超えた分が払い戻されます。
  • 特定疾患医療費助成制度:重症喘息として認定される場合、医療費の助成を受けられることもあります。

関連リンク:
高額療養費制度(厚生労働省)
協会けんぽ:高額医療費の申請方法

当院での対応

当院では、生物学的製剤を含む最新の治療を行っています。血液検査や呼吸機能検査をもとに、患者さん一人ひとりに合った薬剤を選択します。「治療を続けても症状が残る」「薬が増えて不安」という方は、まずはご相談ください。


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