職業性喘息

職業性喘息とは

家では問題ないのに、職場にいる時だけ咳が出る人は、「職業性喘息」の疑いがあります。
喘息は、アレルギーの原因となる物質や、気道を刺激する物質を吸い込むことで発症・悪化する恐れがあります。
もし、職場に粉塵や刺激の強い物質などが多ければ、喘息のリスクが高い環境であると考えられます。

職業性喘息(occupational asthma)は、その病名の通り職場で発生する原因物質により発症する喘息のことです。
また、持病であった喘息が職場環境により増悪する「作業増悪喘息(work-exacerbated asthma)」と合わせて、
「作業関連喘息(work-related asthma)」と呼ばれています。

職業性喘息は、欧米では成人発症喘息の 5~15 % を占めると言われていますが、最近は職業性喘息の存在が広く知られるようになり、
職業性喘息と診断される例も増加傾向にあります。

職業性ぜん息を起こしやすい職種とその原因物質

職業性ぜん息は、以下のような職種で発症リスクが高いとされています:

  • クリーニング業従業員
  • 花屋従業員
  • 動物を扱う職業
  • 小麦粉・そば粉を扱う職業
  • ゴム手袋をつける職業
  • 化学物質にさらされる職業
  • 金属を加工する職業

職業性ぜん息の原因物質は以下のように分類されます:

  • 煙や塩素などの刺激物質
  • アレルギー反応を引き起こす感作物質

また、分子量の違いにより、高分子量物質と低分子量物質に分けられます。

職業性喘息の診断

職業性喘息の診断には、検査のほか、問診が重要です。
職場、自宅など、それぞれの環境や時間帯での症状とピークフローの変化を記録していただきます。
職場から帰宅する夕方に症状が一番強い、休日は症状がよくなる、作業場など特定の場所で息苦しくなるなど
一定の傾向があれば、診断が可能です。

職業性喘息の検査

  1. 胸部レントゲン
  2. 肺機能検査
  3. 呼気NO検査
  4. ピークフロー検査
  5. 血液検査

職業性喘息の治療

職場の理解が得られる場合、配置転換などを申し出るのが理想的です。社内に産業医がいれば相談するのも良いでしょう。
(厚生労働省ガイドライン参照)

実際には、職場の原因物質を完全に排除することは困難なことが多く、原因物質をできるだけ避けながら(マスクの着用や換気など)、
一般的な喘息治療を継続する必要があります。

クリニックからのメッセージ

職業性喘息はしばしば難治性です。難治性喘息の原因となっている物質を同定して職場環境調整を行うことで、
これまでコントロールされていなかった喘息の症状が改善される例もあります。

職場で業務中に咳や息苦しさが現れる場合、職業性喘息を発症している可能性があります。呼吸器内科専門医を受診してご相談ください。

【参考情報】『さまざまなぜん息 職業性ぜん息』環境再生保全機構