呼吸器科

呼吸器科とは、呼吸をする肺、気管支、喉の病気を診療する科です。院長は呼吸器が専門です。肺炎、COPD(肺気腫、慢性気管支炎)、間質性肺炎、睡眠時無呼吸症候群、気管支喘息、肺がん・・・呼吸器の病気は様々なものがあります。しかし「聞いたことはあってもよく知らない」という方が多いのではないでしょうか。

気管支喘息

長引く咳、それは喘息かもしれません・・・

気管支喘息とは、肺につながる空気の通り道である気道が炎症を起こしている状態です。炎症といわれてもなんとなくはわかるけど、ピンとこない方が多いと思います。

ころんで膝小僧をすりむいたとしましょう。膝の傷は炎症です。傷ができると炎症をおこして腫れるように、喘息で炎症をおこした気道も腫れます。キズのジクジクに当たるのが気道では痰なのです。ケガの原因がぶつかったり転んだり色々あるように、喘息(気道の炎症)の悪化刺激の原因にも色々あります。1つがアレルギーです。またカゼも悪化の原因の1つです。体質もあります。1つだけの原因でおこることは少なく、複数の原因が重なることが多いです。

喘息の症状はヒューヒュー、ゼーゼーいう喘鳴だけでなく、気道の慢性的な炎症をもとに空気の流れが制限される症状です。ゼイゼイヒューヒューがなくても、咳だけのこともありますし、胸痛や胸の違和感として感じることもあります。喘息(気道に慢性てきな炎症がある状態)を放置しておくと、気道が敏感になり、発作を繰り返すという悪循環に陥ります。その結果、気道壁が厚く硬くなります。これを「気道のリモデリング」といいます。

喘息は早期に発見し治療すれば、健常人と同じ生活が送れる疾患です。咳や胸部症状でお悩みの方、お気軽にご相談ください。

詳しくは気管支喘息のページをご覧ください

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小児喘息

小児喘息は、アレルギーが原因のことが成人喘息に比べると圧倒的に多いです。気道に炎症が起きて気管支がせまくなることで、ゼーゼー・ヒューヒュー(喘鳴)や咳などの症状がでます。

喘息患者さんの多くは、幼少期にダニや花粉などのアレルゲン(原因物質)によってアレルギーが引き起こされます。子供の喘息の80−90%は乳幼児期に発症すると言われており、この時期に診断され治療を行われることが多くなっています。

ただし、乳幼児期では風邪やウイルス感染などでもゼーゼー・ヒューヒューといった症状が出やすく、実際、当クリニックで喘息ではないかと心配されて来院された幼児患者の大半は気道感染後の喘鳴でした。また幼児では肺機能検査や呼気一酸化窒素検査が難しく、正確な値がわからないことが多いです。そのため乳幼児期(5才以下)と学童期以降(6才以上)の喘息は分けて考える必要があります。当院では幼児患者にたいして、アレルギー素因をみるために鼻汁好酸球検査をおこなっています。

咳喘息

喘息のなかで、喘鳴がなく咳だけのものを咳喘息といいます。放置すると気管支喘息へ進展します。早期治療が大事です。

咳喘息は、慢性的に咳が続く気管支の病気です。一般的な喘息と同様、気道(呼吸をするときに空気の通る道)が狭くなり、いろいろな刺激に対して過敏になって、炎症や咳の発作が起こります。

気管支喘息とにているなと思われる方もいるかもしれません。実は、咳喘息と気管支喘息の違いは、喘鳴があるかないかだけで、喘鳴がなく、咳だけのものが咳喘息、喘鳴があるものが気管支喘息で、原因や治療は基本的には同じと考えていただいて大きな間違いはございません。

診断基準はありますが、一番、確率が高いのは、気管支拡張剤(例えば、メプチンエア)への反応性をみることです。これで、よくなれば、咳喘息の可能性が高まります。喘息といえば、ヒューヒューと苦しいイメージがありましたが、喘息素因をもっているかたは実は、大変多く、また、環境要因もふえて、喘息の方は大変ふえております。ただし、喘息でも早期に発見して、きちんと治療をおこなえば、健常人と全く同じ生活がおくれます。咳喘息の方は、ほとんとの方が治療により、数か月で症状が全くなくなってしまうことが多い印象です。昔のイメージの喘息とは随分とことなってきていると思います。

ころんで膝小僧のをすりむいたとしましょう。膝の傷は炎症です。傷ができると炎症をおこして腫れるように、喘息で炎症をおこした気道も腫れます。キズのジクジクに当たるのが気道では痰なのです。ケガの原因がぶつかったり転んだり色々あるように喘息(気道の炎症)の悪化刺激の原因にも色々あります。その1つがアレルギーです。またカゼも悪化の原因の1つです。体質もあります。ひとつだけの原因でおこることは少なく、複数の原因が重なることが多いです。

喘息の症状はヒューヒュー、ゼーゼーいう喘鳴だけでなく、気道の慢性的な炎症をもとに空気の流れが制限される症状がすべての症状です。ゼイゼイヒューヒューがなくても、咳だけのこともありますし、胸痛や胸の違和感として感じることもあります。喘息(気道に慢性てきなある状態)を放置しておくと、気道がますます敏感になり、発作をくり返すという悪循環におちいります。その結果、気道壁が厚く硬くなります。これを「気道のリモデリング」といいます。喘息は早期に発見治療すれば、健常人と同じ生活がおくれる疾患です。咳や胸部症状でお悩みの方、お気軽に相談ください。

詳しくは咳喘息のページをご覧ください

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COPD(タバコによる気管支、肺の慢性炎症性疾患)、肺気腫

COPDはあまり聞きなれない言葉かもしれません。 言葉の定義ですが、慢性閉塞性肺疾患を英語でいうとchronic(慢性の) obstructive(閉塞性の) pulmonary(肺の) disease(疾患)となり、頭文字をとり、COPDといわれています。

COPDは長期間の喫煙が原因で息がはきだしづらくなる、肺の生活習慣病です。日本には40歳以上の8.6%、約530万人以上の患者さんがいるといわれていますが、診断治療されているのは、その1割にすぎません。年齢があがる(タバコの延べ数)ほど、COPDの患者様はふえていきます。タバコが悪さをするのは肺だけではありまん。COPDの患者様は、健常者にくらべて、全身性炎症、栄養障害、骨格筋機能障害、心・血管疾患、骨粗鬆症、抑うつ、糖尿病が多いことが明らかになっています。タバコは全身に炎症をひきおこすのです。
お薬(気管支へ直接作用する吸入薬)、食事療法、運動療法、感染予防(かぜの予防)で、ある程度の改善と、病気の進行予防ができます。当院では、投薬の他に、2階のキッチンスタジオを使い、おいしくたべ、苦しくなく動く方法を患者様と一緒に考えてまります。

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肺炎

肺炎とは、細菌やウイルスの感染により肺におきる急性の炎症のことです。「肺炎」という名がつく病気には例えば他に間質性肺炎、薬剤性肺炎などがありますが、これらは感染症ではありませんので全く別の病気です。また肺結核も感染症ですが発病までに数ヶ月を要することが多く急性ではないので通常は肺炎には含まれません。なお、かぜはウイルスにより引き起こされた上気道(鼻やのど)の炎症を指します。かぜと肺炎は別の病気ですが、上気道の炎症により細菌が肺に入りやすくなるので、かぜが肺炎の引き金になることがよくあります。

肺炎の症状

肺炎の症状には、発熱、せき、たん、呼吸困難、胸痛などがあります。
 ただし、高齢者の場合は、時に肺の症状があまりなく食欲低下や意欲の低下などが主な症状のことがあり、肺炎を疑いにくいことがあるので注意が必要です。

肺炎の診断

肺に炎症が生じると、レントゲンで陰影が映りますので、胸部レントゲン検査がまず必要な検査になります。場合によっては他の病気との鑑別のため胸部CT検査を行うこともあります。肺炎が疑われれば、かくたん検査を行って原因となる菌を調べる検査や、血液検査で白血球数や炎症反応を調べる検査を行います。

肺炎の種類

これは、大きく3つのタイプに分かれます。肺炎の原因となる病原微生物には、細菌(細菌性肺炎)、ウイルス(ウイルス性肺炎)、その2つの中間的な性質をもつ微生物(非定型肺炎)の3つが考えられます(表1)。
いずれも、感染の経路としては、発症している人の咳に含まれる病原微生物が、口や鼻から入り込んで感染する「飛沫感染」と、ドアノブなどに付着した病原微生物が自分の手の指を経由して口や鼻から体の中に入り込んで感染する接触感染」があります。一般的には、肺炎や風邪などの感染は、飛沫感染であることが多いのが特徴です。

病原微生物による肺炎の種類と特徴

乾いた咳が長く続くことが多い(痰は少なめ)。
原因特徴
細菌性肺炎肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌などの細菌が原因で起こる。
湿った咳と共に、黄色や緑色を帯びた痰が出る。
ウイルス性肺炎インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、水痘ウイルスなど、さまざまなウイルスが原因で起こる。
一般的なかぜ症状に続き、激しい咳、高熱、倦怠感などの症状が出てくる。
非定型肺炎マイコプラズマ、クラミジアなど、細菌とウイルスの中間的な性質を持つ微生物が原因で起こる。

初期の症状は、咳、痰、発熱など、似ているところも多いのですが、細菌性肺炎と非定型性肺炎では、咳の状態に違いがあります。またウイルス性肺炎の場合は、急に39度以上の発熱があることが多いため、そういった症状のわずかな違いからでも、病原微生物を推測することができます。医療機関を受診した時は、自分の症状を細かく説明し、熱の出方(朝方に高熱になり日中は下がるなど)の特徴なども、分かる範囲で伝えるようにしましょう。

肺炎の治療

肺炎は感染症ですから、原因となっている微生物を殺す治療がまず必要になります。細菌を殺す薬が抗菌薬、ウイルスを殺す薬が抗ウイルス薬です。かくたん検査で原因となる菌をはっきりさせるのが基本ですが、菌を見つけられないことがむしろ多く、その時にはいろいろな状況から原因となる菌を推定して適切な抗菌薬を選択します。現在では内服薬でも優れた抗菌薬があり外来治療も可能ですが、症状が高度であったり陰影が広範囲で酸素吸入が必要であったりする時などは入院のうえで点滴による抗菌薬投与が必要になります。
 あわせて、全身状態を改善させる治療も必要になります。血中の酸素濃度が低下している時は鼻から酸素を吸入することが必要となります。誤嚥が原因となっている場合は一時的に食事をストップして点滴で水分や栄養を補給せざるを得ない場合もあります。肺の中に貯まったかくたんを外に出すために胸を叩いたり絞り出したりするリハビリを行うこともあります。誤嚥を改善させるために嚥下訓練を行うこともあります。

肺炎の予防

  1. 1)肺炎球菌ワクチン
     肺炎球菌は肺炎の原因としてもっとも多く、また重症になりやすい菌です。65歳以上になれば肺炎球菌ワクチンを接種するようにしましょう。一回接種すれば5年間有効です。
  2. 2)かぜの予防
    かぜを引くと上気道の炎症により肺炎にかかりやすくなります。特に冬にな
    れば、手洗いやうがいを励行し、少しでもかぜを引かないようにしましょう。
    またインフルエンザワクチンを毎年接種しておくことも重要です。
  3. 3)禁煙
     タバコの煙により肺の気管支の細胞が傷つき、細菌やウイルスが入り込みや
    すくなるため、肺炎のリスクが高くなります。また喫煙により慢性閉塞性肺疾
    患(COPD)となると肺の働きも弱くなり、肺炎になったときに重症となりやす
    くなります。禁煙は重要な肺炎の予防策です。

肺がん

肺がんは、気管支や肺胞の細胞が何らかの原因でがん化したものです。進行すると、がん細胞は周りの組織を壊しながら増殖し、血液やリンパ液の流れなどにのって転移することもあります。転移しやすい場所はリンパ節や、肺の中のほかの部位、胸膜、骨、脳、肝臓、副腎です。

肺がんの診断

健康診断や検診、または症状があって受診した際には、多くの場合胸部X線検査が行われます。肺がんが疑われた場合には、胸部CT検査が行われます。異常が見つかった場合には、肺がんが疑われる部位から細胞や組織を採取する病理検査を行います。これによりがんかどうか、がんの場合はどのような種類のがんであるかを調べ、診断を確定します。
細胞や組織を採取するために最も多く行われているのは検査ですが、状況によってはや検査などを行うこともあります。胸部CT検査で見つかった病変が小さく、病理検査が難しい場合には、経過観察になることもあります。
また、がんの病期や広がりを調べるために、胸腹部の造影CT検査や脳のMRI検査、PET検査、骨シンチグラフィなどを行います。
どの検査をどのタイミングで行うかは、必要に応じて担当医が判断します。検査をする前の説明をよく聞いて、分からないことや気になることがあれば、遠慮なく担当医や看護師に聞きましょう。

肺がん検診

  • ・肺がん検診の対象者:40歳以上
  • ・受診間隔:年に1回
  • ・主な検診内容:質問、肺X線検査、喀痰細胞診
    喀痰細胞診の対象者は、50歳以上で喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の人。

がんの種類(組織型)について

肺がんの主な組織型(がんの種類)は、腺がん、扁平へんぺい上皮がん、大細胞がん、小細胞がんの4つです(表1)。腺がんが最も多く半数以上を占め、扁平上皮がん、小細胞がん、大細胞がんの順に続きます。なお、腺がんは肺腺がんと呼ばれることもあります。肺がんの治療法は、組織型が小細胞がんの場合とそれ以外の場合とで大きく異なります。このため、肺がんを「小細胞肺がん」「非小細胞肺がん」に大きく分けて扱います(表1)。「非小細胞肺がん」には、腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんなどの組織型の肺がんが含まれます。

表 1 主な肺がんの組織型とその特徴

組織分類多く発生する場所特徴
非小細胞肺がん腺がん肺野・肺がんの中で最も多い
扁平上皮がん肺門(肺野部の発生頻度も高くなってきている)・咳や血痰けったんなどの症状があらわれやすい
・喫煙との関連が大きい
大細胞がん肺野・増殖が速い
小細胞肺がん小細胞がん肺門・肺野ともに発生する・増殖が速い
・転移しやすい
・喫煙との関連が大きい

いずれの組織型のがんでも発生要因の1つに喫煙があります。中でも、扁平上
皮がんや小細胞がんは喫煙との関連が大きいがんですが、喫煙をしていない人
でも肺がんになることもあります。

肺がんの治療

肺がんの治療は、「手術」・「放射線治療」・「薬物療法」に大別されます。新規薬剤の開発にともない、「薬物療法」には細胞障害性抗がん剤のほか、分子標的治療薬や免疫療法などが含まれるようになっています。肺がんの治療方針は病期(ステージ)に基づき決定されます。逆に言えば、治療方針の決定においては正確な病期診断が重要になります。病期診断の詳細については、国立がんセンターのページを参考にしてください。


間質性肺炎

間質性肺炎とは間質性肺炎は語尾に肺炎が付きますが、肺炎とはまったく異なる病気です。
肺という臓器をコップにたとえると、コップの中で起こる病気が肺炎で、コップ自身が侵される病気が間質性肺炎です。間質性肺炎の方がより広い範囲で病気が起こり、息切れなどの症状が強くなります。治療もコップの中を洗えば済む肺炎に比べ、コップ自身の修繕が必要な間質性肺炎は一般的に難治性です。

間質性肺炎の分類

間質性肺炎は、以下の3つの視点で分類されます(図表)。

  • ① 発病の経過
  • ② 原因
  • ③ 病気により変化した肺の形態

① 発病の経過

発病の経過は、病気の進行速度によって「急性」「慢性」の2つに分けます。

  • 急性間質性肺炎:数日から数週の単位で急速に進行
  • 慢性間質性肺炎:数か月から数年の単位でゆっくり進行(多数を占める)

② 原因

原因は多くの場合、特定できません。そのため、原因不明の間質性肺炎を「特発性間質性肺炎」と呼びます。

原因が推測される場合、最も多いのは膠原病(関節リウマチなど)による間質性肺炎です。

その他の原因として、以下のようなものがあります。

  • 抗がん剤や漢方薬などの薬剤
  • カビ・羽毛・石材・アスベスト・超硬合金などの吸入

これらの場合、間質性肺炎という病名ではなく、原因に即した病名が用いられます。

  • 薬が原因 → 薬剤性肺障害
  • カビや羽毛へのアレルギー → 過敏性肺炎
  • 職業性の粉塵 → 塵肺・石綿肺・超硬合金肺

また、喫煙は間質性肺炎を進行させるため注意が必要です。

③ 変化した肺の形態

病気により変化した肺の形態は、代表的なものとして以下の6つに分類されます。

  • 通常型(多数を占める)
  • 非特異性
  • 器質化肺炎

図表 間質性肺炎の3つの分類

1. 発病の経過
急性数日から数週間単位、少数
慢性数か月から数年単位、多数
2. 原因
特発性原因不明、多数
膠原病性関節リウマチなど膠原病に合併、少数
その他薬剤、カビ・羽毛・石材・アスベスト・超硬合金などの吸入、少数
3. 病気により変化した肺の形態
通常型50-60%
非特異性10-20%
その他器質化肺炎など、まれ

※慢性、特発性、通常型の間質性肺炎は「特発性肺線維症」と呼ばれ、間質性
肺炎の多数を占めます
 間質性肺炎はこの3つの分類により細分化され、症状、経過、治療が異なり
ます。このなかで「慢性」、「特発性」、「通常型」の間質性肺炎の患者が多
数を占めており、このグループを「特発性肺線維症」と呼びます。

間質性肺炎の症状

症状は息切れと咳です。息切れは最初、階段の上りや荷物を持った時のみに感じられますが、病気が進行すると部屋の中の移動や服の着脱でも起こります。少しずつ進みますので、意外に本人は軽視している場合があります。一般に咳は痰を伴いません。しかし、実際に間質性肺炎として受診される方の多くは無症状で、胸部のレントゲンやCTの異常が受診の動機となっています。

間質性肺炎の診断

間質性肺炎の診断に際し、前述の3つの分類を行い、さらに重症度や活動性(安定度)も評価します。診断にはレントゲン、CTといった画像検査が重要です。胸部レントゲンでは肺が縮小し、肺の下側がうっすら白くなります。CT検査が診断の中心となります。CTにより間質性肺炎の有無から、「通常型」や「非特異性」などの形の分類、重症度など多くの情報が得られます。さらにKL-6等の採血項目で病気の活動性を評価し、呼吸機能検査の肺活量、肺拡散能(当院ではできません)や血液中の酸素濃度の低下の程度で病気の重症度を評価します。また、補助的に行う検査として気管支鏡を使って行う気管支肺胞洗浄、肺生検があります。肺生検には、さらに大きな材料を採取する目的で手術による外科的肺生検もまれに行われます。また、レントゲンやCTの時間経過での変化を観察し、病気の進行速度を知ることも重要です。

間質性肺炎の治療

特発性肺線維症はこれまで有効な治療法がなく、酸素が欠乏する段階になると自宅で酸素を投与する在宅酸素療法を行うくらいでした。最近、ピレスパやオフェブという薬が発見され、少しずつ治療が行われ始めました。ただし、薬の効果は進行を遅くすることに留まります。数年に及ぶ長期間の服用が必要となりますが、副作用や薬剤費が高額であり、全ての患者さんに使用している状況ではありません。喫煙は間質性肺炎を悪化させること、肺がんの合併を増すことから、ただちに禁煙することが重要です。また、特発性肺線維症の急性増悪時(後述)、急性間質性肺炎、器質化肺炎という形の間質性肺炎にはステロイド剤や免疫抑制剤を使用します。

間質性肺炎の予後と療養

特発性肺線維症は一般的に数か月から数年単位で少しずつ進行し、息切れが増します。さらに、感冒、手術、大怪我など、体に過度のストレスがかかった際、数日の単位で急激に病気が進行し、突然の激しい息切れや発熱が出ることがあります。この状態を急性増悪と呼び、治療は困難であり、特発性肺線維症で亡くなる方の40%程度を占めます。また、肺がんの合併も多く、10%程度の方が肺がんで亡くなります。特発性肺線維症の方の場合、特発性肺線維症のために手術、抗がん剤投与、放射線照射のいずれにも制限が生じ、肺がんの治療に難渋します。特発性肺線維症の方は、無理のない日常生活を心がけ、感冒には特に注意を払い、予防やかかった際には安静、早期の病院受診が重要です。また、肺がんの予防のための禁煙や早期発見のための定期的CT検査の施行も重要です。

参考文献

1)日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会編:特
発性間質性肺炎診断と治療の手引き. 南江堂, 東京,2004.
2)難病情報センター 特発性間質性肺炎,
http://www.nanbyou.or.jp/entry/156 ,(2017.12.11時点)


気胸

気胸(ききょう)とは肺から空気がもれて、胸腔(きょうくう)にたまっている状態をいいます。空気が漏れてたまっても、胸は肋骨があるために風船のように外側に膨らむことはできません。その代わり、肺が空気に押されて小さくなります。つまり、肺から空気がもれて、肺が小さくなった状況が気胸なのです。

気胸の分類

自然気胸

気胸(ききょう)は、10歳台後半、20歳代、30歳代に多く、やせて胸の薄い男性に多く発生します。肺が一部、ブラと呼ばれる袋になり、ここにある時、穴が開くのです。これは運動をしているときに起こすわけではありません。交通事故やナイフで刺されたというような、明らかな理由もなく発生するので、これを自然気胸と呼びます。医学用語では理由がよく分からないことを特発性(とくはつせい)というので、この気胸のことは特発性自然気胸という長い呼び方をします。
自然気胸では肺に穴が開いて、一時的に空気が漏れますが、多くはすぐに閉じてしまいます。漏れた空気は血液に溶け込んで次第に消失します。
気胸の問題点は、穴がふさがらず、空気が漏れ続けるときです。また、しばしば再発を起こすことも問題です。
肺気腫(はいきしゅ)や肺がんのように、何か肺の病気があり、これが原因となって起こるときは続発性(ぞくはつせい)と呼んでいます。これも、交通事故やナイフで刺されたというような、明らかな理由もなく発生するので、自然気胸と呼びます。つまり、続発性自然気胸という長い呼び方をします。続発性自然気胸は肺の病気を持っている人になりますから、比較的高齢者に多い病気です。

外傷による気胸

交通事故で肋骨が折れて、肺に刺さると気胸(ききょう)を起こします。このように起きた気胸は外傷性気胸と呼びます。
病院で針をさすような治療や検査を受けたときにも気胸を起こすことがあります。この場合、医原性(いげんせい)気胸と呼びます。

生理による気胸

月経随伴性気胸(げっけいずいはんせいききょう)という変わった気胸があります。これは生理(月経)の前後に発症する気胸です。月経随伴性気胸の原因は、子宮内膜症が横隔膜に広がり、生理のときに横隔膜に穴が開くことにより空気が胸腔に空気が入り気胸となる、あるいは肺に子宮内膜症があり生理に際して穴が開くことが原因であると考えられています。
気胸は女性には比較的少ないので、女性が気胸を起こしたときは、月経随伴性気胸の可能性を考えておかなくてはなりません。治療は外科療法かホルモン療法を行います。

気胸の症状

気胸は突然肺に穴が開いて空気が胸腔(きょうくう)に漏れる疾患です。症状としては胸痛、呼吸困難、咳がありますが、まれに症状がないのに胸部レントゲン検査で発見されることがあります。
空気が大量に漏れると、肺がしぼみ、さらに心臓を圧迫してショックになることがあります。また、同時に左右肺の気胸を起こすと大変です。

気胸の検査

気胸を診断するため、胸部レントゲン検査を行います。胸部レントゲン検査で気胸があることが診断できたら、胸部CT検査を行います。高度の気胸(肺がほぼしぼんでいる)のときは胸部CT検査を行っても、肺の情報が少ないので、肺が膨らんでから胸部CT検査を行います。