【コラム】COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは
~タバコによる肺の老化と、禁煙・治療の大切さ~

■ COPDはどんな病気?

COPD(シーオーピーディー:慢性閉塞性肺疾患)は、タバコによって肺がゆっくり壊れていく病気です。気道(息の通り道)が細くなり、空気の通りが悪くなることで、「息切れ」「せき」「たん」などの症状が少しずつ進んでいきます。

初期のうちは風邪や加齢と間違われることも多く、気づいたときには肺の機能がかなり落ちていることもあります。

■ タバコが肺に与える影響


慢性閉塞性肺疾患におけるFEV1経年的低下を示すグラフ
COPD患者のFEV₁(1秒量)は喫煙継続で急激に低下しますが、禁煙により低下の進行が緩やかになります。

気流閉塞とCOPD進行のイメージ図
気流閉塞とCOPDの進行

喫煙を続けると、肺の奥の細い気道が炎症を起こし、やがて肺胞という小さな袋(空気の交換をする場所)が壊れていきます。これを「気腫性変化」と呼びます。

その結果、息を吸っても吐き出しにくくなり、少し動いただけで息苦しく感じるようになります。

禁煙で進行を止められる


COPDの早期受診から診断、治療介入までの流れを示す図
質問票(COPD-Q)による疑い例の早期発見から、禁煙・吸入療法などの治療介入、生活習慣改善までのプロセス。

呼吸機能の低下を「FEV1(1秒量)」という指標で測ることができます。喫煙を続けた人は、このFEV1が急激に下がることが分かっています。しかし、途中で禁煙すると、その後の低下がゆるやかになります

たとえ高齢であっても、禁煙の効果は確実にあります。「今さらやめても…」と思う必要はありません。禁煙は、COPDの進行を止める最も重要な治療です。

■ COPDにも「薬による治療」があります

禁煙だけでなく、吸入薬による治療も効果的です。気道を広げて呼吸を楽にし、せきや息切れを軽くします。症状が落ち着くと、日常生活や外出がしやすくなり、将来の悪化や入院のリスクを減らすことができます。

最近では1日1回吸うタイプなど、使いやすい薬も増えています。症状や生活に合わせて薬を調整しながら、「禁煙+吸入治療」で長く安定した生活を目指します。

■ COPDと喘息の違い


日本におけるCOPDと気管支喘息の死亡者数の推移を示す棒グラフ
2023年のCOPDによる死亡者数は16,941人で、気管支喘息1,089人を上回ります(厚労省統計)。

同じように「せき」「息切れ」が出る病気でも、喘息は治療薬の進歩で死亡率が大きく下がりました。一方、COPDは気づかれにくく放置されやすいため、受診や治療の遅れが問題になります。

■ 「年のせい」と思っていませんか?

喫煙歴がある方で、

  • 咳が長く続く
  • 痰が多い
  • 階段や坂で息が切れる

といった症状がある場合、COPDの可能性があります。「年だから仕方ない」と思わず、一度呼吸機能の検査(スパイロメトリー)を受けてください。

■ 早めの検査・治療が命を守る

スパイロメトリーは息を吸って吐くだけの簡単な検査です。専門の呼吸器クリニックでは、正確な判定とアドバイスを受けられます。

早期にCOPDを見つけることで、禁煙や吸入治療などを開始し、将来の「息苦しさ」や「入院」「在宅酸素療法」のリスク低減につながります。

■ まとめ

  • COPDはタバコによってゆっくり進む病気
  • 禁煙は何歳からでも遅くない
  • 吸入薬で症状を軽くし、生活の質を守れる
  • 「咳が長い」「息切れ」があれば早めに検査を
  • 呼吸器専門クリニックでの早期発見が大切

🔹当院では

喫煙歴のある方、長引くせき・息切れのある方には、呼吸機能検査や禁煙サポート、吸入薬治療も行っています。お気軽にご相談ください。

呼吸機能検査(スパイロメトリー)のご案内
呼吸器科のご紹介

■ よくある質問

COPDは治りますか?

根治は難しい病気ですが、禁煙と適切な治療で進行を抑え、症状を軽くすることができます。

検査は痛いですか?

スパイロメトリーは息を吸って吐く呼吸検査で、痛みはありません。

吸入薬の副作用はありますか?

まれに口渇や声のかすれ等が出ることがあります。用法・用量を守り、異常を感じたら医師にご相談ください。

禁煙は今からでも遅くない?

禁煙のメリットはいつ始めても得られます。思い立った日が最適な開始日です。

※本ページは一般向けの医療情報です。治療の詳細は症状や併存疾患により異なります。必ず医師にご相談ください。