【コラム】インフルエンザ陰性でも高熱がある場合の登校・登園について

― 学校医の立場から ―
「インフルエンザは陰性でした。もう学校に行っていいですか?」この質問は、毎年必ず受けます。結論から言います。可能であれば、インフルエンザに準じて休んでください。

ただし、すべての感染症がインフルエンザと診断できるわけではありません。
本コラムでは、インフルエンザとまでは診断できない発熱性疾患の場合に、
学校医としてどこまで休むべきか、その考え方を解説します。

大前提は、「解熱していること」です。

なぜ「解熱」が条件なのか

インフルエンザが陰性であっても、
インフルエンザではないと断定することはできません。

また、仮にインフルエンザでなかったとしても、
他のウイルスによる感染症で、人にうつる可能性が高い状態です。

インフルエンザや新型コロナと明確に診断できない発熱性疾患は、
日常診療では決して珍しくありません。

熱が下がるということは、
体の免疫がウイルスに対して優位に立ち始めたサインです。

つまり、ウイルスが免疫に抑え込まれ、
感染力はピーク時よりもある程度低下していると考えられます。

しかしこれは、
「ウイルスが完全に体から消えた」
あるいは
「感染しなくなった」
という意味ではありません。

  • 免疫に押されて
  • 活動性は落ち
  • 数は減っているものの
  • 体外に排出されるウイルスはまだ存在します

いわば、
ヘロヘロに弱ったウイルスが残っている状態です。

解熱後すぐの登校・登園は勧めません

解熱した当日からの登校・登園は勧めません。

理由は明確です。

  • 体力が十分に回復していない
  • 再度発熱することが多い
  • 弱っていてもウイルスは排出されている

そのため、学校医の立場としては、
解熱後、もう1日様子を見る
これを基本としています。

登校・登園の目安(診断が確定しない場合)

  • 発熱中:登校・登園不可
  • 解熱した当日:休む
  • 翌日も平熱で元気、食事がとれる、再発熱なし
    → 翌々日から登校・登園可

診断が確定できない場合でも、
この程度の間隔をあけることで、
感染拡大と本人の体調悪化を防ぐことができます。

体調不良で自宅療養している子ども

インフルエンザ陽性の場合

インフルエンザと診断された場合は、

  • 発症後5日
  • かつ 解熱後2日(幼児は3日)

この両方を満たすまで、
学校保健安全法に基づき出席停止となります。

インフルエンザ陰性だが高熱がある場合

ここが最も判断に迷う場面です。

  • インフルエンザは初期に陰性となることがある
  • 他の感染症(アデノウイルス、溶連菌、COVID-19など)とも診断できない
  • 最終的な診断名が確定できないケースが多い

この場合、法的な出席停止の規定はありません。

しかし、学校医の立場から見ると、
感染防止の観点では
「インフルエンザに準じて少し休む」ことが望ましい、
という結論になります。

登校・登園後の注意点

  • マスク着用
  • 手洗い・咳エチケット
  • 体調が悪くなったら無理せず帰宅

「もう治った」と過信しないことが重要です。

発熱後に登校した生徒が教室でマスクを着用して学習している様子

最後に

インフルエンザ陰性=安全、ではありません。

診断がつかない発熱性疾患ほど、
慎重な判断が必要です。

無理に登校・登園させると、
本人がつらくなる
周囲に感染が広がる
結局、学校から呼び出される

この流れが一番よくありません。

「1日多く休む」ことは、
本人・学校・周囲、すべてにとってプラスです。

参考:社会人の場合

社会人については、法的な出勤停止の規定はありません。

当院としては、可能であれば
学校保健安全法に準じた対応
(インフルエンザやCOVID-19の場合、
「発症後5日」かつ「解熱後2日」)を推奨しています。

ただし、最終的な判断は、
会社と本人の協議によります。

まとめ:登校・登園の考え方(学校医の立場)

インフルエンザと診断された場合

学校保健安全法に従い、
発症後5日 かつ 解熱後2日(幼児は3日)
の両方を満たすまで、登校・登園はできません。

インフルエンザ陰性だが、症状が強く「インフルエンザ相当」と考えられる場合

学校医の立場では、可能であればインフルエンザに準じて休むことを推奨します。
法的な出席停止ではありませんが、感染拡大の予防本人の回復を優先する判断です。

診断名が確定しない発熱性疾患の場合

  • 発熱中:登校・登園不可
  • 解熱当日:休む
  • 翌日:平熱で元気・再発熱なし → 翌々日から可

登校後も、マスク手洗いを徹底し、
体調変化(だるさ、咳の悪化、再発熱など)があれば早退を検討します。