【コラム】喘息の治療はいつまで続けるべきか?

「先生、喘息の治療はいつまで続ければいいんですか?」——診療の現場で本当によくいただくご質問です。呼吸器内科医として30年診療を続けてきた立場からお伝えすると、一概に「ここで終わり」とは言えません

中止できる方/できない方がいる理由

長期間吸入ステロイド薬(ICS)を継続し、炎症が十分に落ち着いた後、医師の判断のもとで中止しても問題のない方がいます。一方で、自己判断で中止してしまい、数か月後に大きな発作を起こしてしまう方も少なくありません。

吸入ステロイドの年間使用本数と喘息による死亡リスクの関係を示すグラフ
年間に使用する吸入ステロイドの本数が多いほど、喘息による死亡リスクは低下することが示されています(Suissa S, N Engl J Med 2000)。

吸入ステロイド薬のエビデンス

吸入ステロイド薬は、喘息による死亡を減らす効果が最もはっきり示されている薬剤です。例えば、Samy Suissa らの研究(N Engl J Med 2000;343:332-336)では、1か月あたりの使用本数が多いほど喘息死亡リスクが低下することが示されています。概ね、月1本(年間12本)をきちんと使っている方は、そうでない方に比べて死亡率が明らかに低いという結果でした。

また、低用量であれば全身への影響はほとんどないとされ、無理にやめる必要がない方も多いのです。

それでも「減らしたい・やめたい」方へ

お気持ちは自然です。実際、炎症がしっかり鎮静し、医師が慎重に評価したうえで段階的に減量・中止して問題のない方もいらっしゃいます。重要なのは、症状・発作歴・生活環境(季節、花粉、職場環境など)を総合して、お一人おひとりに合わせて判断することです。

ポイントまとめ

  • 治療の「ゴール」は人それぞれ。画一的な正解はありません。
  • 自己判断での中止はリスクが高いので避けましょう。
  • 減量・中止は、医師と相談しながら段階的に行うのが基本です。

まずはご相談ください

「やめられるかもしれないけれど、やめないほうが安心な方」もいれば、「続けたほうが良いかもしれないけれど、やめても問題ない方」もいます。答えはお一人おひとり違うからこそ、<stron