小児喘息

子どもの頃に発症する気管支喘息を小児喘息と言います。小児喘息は、気管支がせまくなることにより、喘鳴(ぜんめい:ぜーぜー、ヒューヒューすること)や咳、たん、呼吸困難を繰り返す病気で、「かぜ」「天気」「季節の変わり目」などで悪化することが特徴です。アレルギーにより気道が過敏になることで起こっていると考えられます(下図)。子どもの気道は大人よりも狭く、風邪だけでも喘鳴を起こすことがあります。
正常な気道、喘息患者の気道、喘息発作時の気道の断面図。気道の状態がどのように変化するかを示しています。
正常な気道、気道炎症が進んだ気道、そして重度の喘息発作時の気道の縦断面図。気道内の変化とその影響がわかりやすく示されています。

小児喘息は遺伝するの?

喘息になりやすい子供としては、家族が全員喘息だと子供もなりやすいと言われていますが、喘息の発症には環境因子の影響も大きいので、必ずしも発症するわけではありません。
また、アレルギーの病気(アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎など)がある人は喘息になりやすいです。アトピー性皮膚炎は早期にしっかり治療を行うことで、湿疹の部位からダニや食物などの成分が体内に入り、アレルギーを起こすのを防ぐことができます。

小児喘息は治るのか?

気管支喘息の発症年齢分布を示したグラフ。縦軸は症例数、横軸は年齢を示し、累積発症率も併せて表示されています。
小児喘息の発症は3歳までが最も多く、大半の方が小学校入学までに発症します。早期にきちんと治療をすれば、成長とともに12~15歳頃には症状がなくな
る場合が多いですが、約3割の方は成人後も治療を続ける必要が出てきます。小児のころから、気道の炎症が長期間続くと気管支が硬くなって、気道が狭いまま戻らなくなり、成人になっても呼吸機能が低いままになってしまうことがあります。
喘息は、根気よく治療を継続すれば、コントロールのできる病気です。子どものうちから、喘息をコントロールしていくことが非常に重要です。

どんなときに受診するべき?

喘息の特徴的な症状を説明するイラスト。ヒューヒュー、ゼーゼーという音、息苦しさ、夜間の咳、運動後の息切れ、長引く咳などの症状を示しています。

子供が激しく咳き込むので、病院を受診したけれど、「ヒューヒューしてないから喘息ではない」と言われた経験はないでしょうか喘息は、初期のころ昼間は比較的症状が治まっていることが多いです。
症状が起こりやすいのは、夜間から早朝にかけて。したがって、昼間に診察を受けても、ぜんそくではないと診断されてしまうことがあります。以下の症状が続いている方は、一度、呼吸器内科を受診してください。

小児喘息の診断

ぜんそくは検査で診断がつくというよりは、症状から診断する病気です。ですので、初期の段階では、医師にうまく症状を伝えることが非常に大事です。とくに、どういうときに咳や発作がおこるかが大事です。
喘息発作がどのような状況で起きるかを示すイラスト。タバコの煙、ペット、布団、花火、運動などのトリガー例を説明しています。
上の表以外に

  • 夜中や明け方に咳込んだか?
  • 風邪をひいていたか?
  • メプチン(発作治療薬)をどのくらい使用したか、使用して発作がどうなったか?

などを記録されると診断の助けになります。
乳幼児の肺や気管支は成熟しておらず、ただの風邪でも、ゼーゼーが聞こえたり、咳がなかなか治まらないことがあります。そこで1回だけでは診断せず、2~3回目くらいのゼーゼーの時に喘息としての治療を開始することが多いです。一方で、アレルギーの存在や、夜間や明け方の喘鳴が長期間続くなど、初回の受診時でも喘息と考えられる場合もあります。病気の経過や、家族に喘息がいるかどうか、アレルギー検査、呼気検査、肺機能検査、薬への反応性などを含めた、総合判断となります。

小児喘息の検査

小学生以上のお子様の場合は、肺機能検査や、呼気一酸化窒素検査をおこないます。胸部レントゲンや血液検査もおこなうことがございます。小さなお子様は検査が難しいこともあります。乳幼児で検査が検査が難しい場合は鼻水を調べることで、そこに、アレルギー性炎症があるかあるていど推測することができます。

原因アレルゲン

喘息を発症させる要因は人によって様々です。一般的には、以下のものが考えられています。
喘息発作を引き起こす刺激要因を説明するイラスト。ウイルス感染、ダニ、カビ、ストレス、激しい運動、タバコの煙などが挙げられています。
一般的なアレルゲンには「ハウスダスト、ダニ、イヌ・ネコの毛等」が多いです。血液検査でもある程度調べることができます。アレルゲンは人それぞれ違うので、普段の生活の中で刺激になっていると思われるものを考えて、記録してみましょう。”猫を飼っている人の家に行くと咳が出る”とか、”掃除をするとくしゃみが出る”など、わずかな変化でも構いません。
アレルギー検査の結果表。ハウスダストやスギ、ヒノキなどのアレルゲンが分類されており、数値とクラス分けで示されています。お子さんがどんなときに発作が起きるか、普段から症状をよく観察し、それらを避けることが非常に大切です。人によって、刺激物質となるアレルゲンはさまざまです。発作が起きた時の状況を思い出し、それらに合わせた対策を実践しましょう。

小児喘息の治療

喘息治療は、「症状が起こらないように毎日行う治療」と「症状や発作が起きた時に行う治療」の二つに分けられます。
喘息は「毎日治療を続ける」ことが大切です。喘息症状がないときでも、気道の炎症は続いており、風邪やハウスダストなど炎症を引き起こす刺激が加わ
ると、再び症状が現れてしまいます。そのため、喘息は、「症状がある時だけではなく、毎日治療する」ことが大切です。
当院の小児喘息の治療方針について

小児喘息のガイドラインにのっとって治療を行います。

5歳以下では、基本治療としてまずアレルギーの薬を飲み、コントロールできない場合に吸入ステロイド薬を加えることが多いです。学童期以降の患者様に対しても、漫然と同じ薬を使用し続けるのではなく、検査等を使い、個々の患者さんの病状に合った治療薬を選択していきます。

正しい吸入方法:
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喘息・小児ぜんそくを専門とするクリニックです

院長は喘息(ぜんそく)を専門にする呼吸器内科の専門医です。
ぜんそくは、永きにわたって付き合う必要のある病気です。したがって、お子様が喘息である場合、将来のことまで見据えた医療を行うことが肝要です。子供の喘息患者の場合、その子が大人になった時の事まで考えて十分な治療をしておかないと、大人になった時に重症の喘息になっている可能性が高くなります。子供だからお薬をあまり使いたくないという理由で不十分な治療を行っていると、大人になってから発作や入院を何度も繰り返すコントロール不良な状態になってしまう危険性があります。当院は子どもから高齢の方まで、年齢を問わず診療しています。子供の喘息患者さんに対しては、その子が将来大人になったときの状態まで考えた医療を提供いたします。